「HPVワクチンの問題は、日本だけで起こっていることだと、よく言われています。でも、今日の話を聞いて、そうじゃないと分かりました」
坂井七海さんの言葉は、私自身の感想と重なった。
ワクチンを接種した翌日に失神して、高熱、歩行障害、痙攣、腹痛など、様々な体調異変に苦しんでいる坂井さんは、今も車椅子生活を送る。
24日、東京大学・武田ホールで行われた国際シンポジウム「世界のHPVワクチン被害は今」では、コロンビア、スペイン、イギリス、アイルランド各国から、HPVワクチンによる深刻な副反応被害が報告された。
慢性疲労、頭痛、失神、視力障害、痙攣、自己免疫異常など、日本の少女たちに起きている症状と共通するものも多い。
驚くべきことに、コロンビアでは6名死亡(うち1名は自殺)、スペインでは7名( 2017 AEMPS REPORT)の死亡疑いが報告されていた。
スペインで死亡した1人の女性については、裁判でワクチン接種との因果関係が認定されている。
ヨーロッパにおけるHPVワクチンの副反応報告(2017年7月時点)によると、神経障害:10,021人、死亡44人。(スライド画像)こうした深刻な有害事象とHPVワクチンとの因果関係については、科学的な解明が待たれるところだが、日本だけではなく、世界各地で問題が起きていることが判明した。
昨年あたりから、日本ではHPVワクチンの「積極的勧奨の再開」を求める声が、医療者から上がっている。
そこで枕詞のように付いてくるのが、「WHOが安全性を認めた」「日本で起きている副反応は、海外では問題になっていない」というセリフだ。被害を訴える少女たちに対して「それは心因性だ」と決めつける医療者も多い。
このままHPVワクチンの積極的勧奨を再開しなければ、子宮頸がんで死亡する女性に対して責任問題だ、という恫喝まである。
実は、海外でも同じような状況が起きていた。スペインの被害者団体代表・アリシア・カピーラさんは次のように語っている。
「被害について声を上げたら、それは心因性だと言われました。こうした批判で、私たちは二重の被害を受けています」
アイルランドでは、被害を訴える少女やその家族に対して「感情的なテロ行為」という批判まで起きていた。現在の日本でも一部の医療者が、同様のことを行っている。
ワクチン接種後、女の子たちに起きた健康被害が心因性であると主張する医療者に、私はこう問いたい。
「あなた方は、精神医学の専門的な診断スキルを持っているのだろうか?」
ワクチンを含めた医薬品の有用性は、効果と副作用のバランスで判断される。HPVワクチンの「積極的勧奨の再開」を求める医療者たちは、この有用性を自分たちが判断するものだと勘違いしているのではないだろうか
だが、有用性を判断をする権利は、当事者である患者(被接種者)にあるはずだ。
これまで薬害C型肝炎、イレッサなどの報道を行ってきた立場としては、医薬品の副作用は、とても難しく悩ましいテーマである。
イレッサ訴訟については、被害を訴える原告に同調する報道が大半を占める中、私は唯一疑問を呈するテレビ報道を行った。その結果、イレッサ訴訟の弁護団から糾弾され、BPOから不可解な裁定まで受けた。以来、「薬害」というフレーズには、強い警戒心を持って臨んでいる。
そのような経験を持った視点で見ても、HPVワクチンについては、まだ分からないことが多い。決して日本だけで有害事象が起きている訳ではない以上、「積極的勧奨の再開」を求めるのは無責任な行為だと私は思う。