☞「他家臍帯血治療でなぜ医師は逮捕されたのか」日経メディカル 2017.10.5
厚労省がいよいよ免疫細胞療法の規制に乗り出す、というニュアンスの報道をNHKがここ数日行なっている。だが、どこまで本気なのか、引き続き注視する必要があるだろう。
がん拠点病院には免疫細胞療法を禁じる、民間の免疫クリニックは、施設基準で安全性を担保して継続、という決着の可能性もあるからだ。
日本医科大・勝俣教授は「なんちゃって臨床試験」として、免疫細胞療法が、公認されることを危惧している。
官僚が記者に情報提供を行い、特ダネ的に報道させるのは常套手段だが、ウラで握っている報道など、何も価値はない。 そこには官僚の隠された思惑が刷り込まれて、国民の利益にはならないからだ。
それに、最大手の瀬田クリニックは、国家戦略特区に指定されているから、政権交代しないうちは、厚労省も民間の免疫クリニックには手を出せない。
元厚労技官で、医師及び弁護士資格を持つ田邉昇氏は、2017年10月5日配信の日経メディカルで、次のようにコメントしている。
『民間で行われている免疫療法などが全て、「エビデンスがないのに高額な金で行われているから悪質」といった議論は間違っています。標準治療で見放された患者を少しでも何とかしたいと思うのは、患者や家族と同様、医師が持つべき倫理だと思います。その選択肢は様々なものがあり、エビデンスや学会、お上のお墨付以外の医療はできないと言うことになれば、医師は科学者でも職人でもなく、単純労働者になってしまいます。』
日経メディカル(2017年10月5日配信)
田邊氏の主張は、免疫細胞療法を行なっていた国立病院機構鹿児島医療センター・花田医師の「患者によって効果がある、患者が希望する治療を行うのは医療者として重要」というセリフと重なる。
エビデンスがない治療法は、あくまで実験的な医療であり、一般診療として実施するのは倫理的に問題だ。
それに民間の免疫細胞療法の大半は、患者や家族に対して、「がんが消えた」「こんなに元気になった」など、根拠なき有効性をアピールして高額な治療費を取っているのだ。これは、信義誠実の原則に反している。
ある免疫クリニックの同意書には「訴えないこと」を、誓約させる一文が入っていた。
免疫細胞療法を検討している方は、その意味をよく考えてほしい。