腫瘍内科と緩和ケアを行っている、西智弘医師。
担当する患者100人以上が免疫細胞療法を受けたが、一人も効果があった患者はいなかったという。
また、免疫クリニックの説明で必ず出てくる話が、「抗がん剤と併用して免疫細胞療法を受けると、副作用が軽減する」。
こうした患者がいるのか、聞いてみると、西医師は苦い表情で首を横に振った。
先の投稿でも触れたが、「患者の希望に応える」という、もっともらしい理由をつけて免疫細胞療法を行う医師は、少なからず存在する。
これについて、西医師はこう言った。
「それは偽りの希望。
免疫細胞療法を受けて、後悔して亡くなっていく患者さんをたくさん診ている」
今回、約1時間のインタビュー動画から、3分30秒の抜粋版を公開する。
<10/10 追記修正>
本投稿について、お読みいただいた方に誤解が生じていると感じたので、説明を加えます。
西智弘医師がインタビューで言及している「免疫細胞療法」は、自由診療として広まっている医療行為です。
一般診療として実施されている「免疫細胞療法」は、進行がん患者に対して、有効性が立証されていないことを巧みに伏せて、過度な期待を抱かせ、第三者が客観的に効果を検証できない状態で治療を行い、高額な費用を取っています。
これは医療倫理の観点から極めて問題がある行為です。 免疫クリニックの中には、虚偽や誇大な広告宣伝を行っており、薬機法違反に問われる可能性も出ています。
一方、西医師は正式な手順に従った臨床試験の「免疫細胞療法」を批判しているわけではありません。日本では、がん治療薬として第3相臨床試験で有効性が確認された「免疫細胞療法」はありません。
最近、キメラ抗原受容体T細胞療法・通称CAR-Tが、多発性骨髄腫などの臨床試験で良い成績を上げて注目されています。
しかし、これも一般の診療として普及するかは未知数で、「実験的」段階です。
正式な臨床試験で行う場合は、「実験的な医療であること」「期待する効果(ベネフィット)と、効果がない可能性や副作用などのリスク」などを、患者に対してしっかりと説明を行い、理解してもらう点などが、自由診療の免疫細胞療法とは大きく異なります。
注目されている「免疫チェックポイント阻害剤」は、医療現場で「抗体薬」として認識されています。
国立がん研究センターのサイトでは「広義の免疫療法」と見解を示したことで、誤解が広まっているのかもしれません。
その為、私は民間の免疫クリニックが行なっているものを「免疫細胞療法」として、免疫チェックポイント阻害剤と区別して表記しています。