最初の取材と報道のテーマは、歯科治療でスタートした。
5日、入れ歯治療の指導者として著名な村岡秀明先生を訪ねて、インタビューをさせていただいた。
村岡先生のクリニックは、最寄りの駅からバスを乗り継いだ住宅街にある。全国的な知名度でありながら、地域に根ざした医療を実践していることがうかがわれる。
村岡先生は入れ歯の研究のため、なんと自分の健康な歯を次々と抜いてしまったという、筋金入りの歯科医。
現時点で残っている歯は2本のみ。いずれその2本も抜いて総入れ歯に挑戦するそうだ。
患者が入れ歯をどのように感じているのか、自身で体験するのが最も確実に理解できる─
確かにそうだとは思うが、実行に移す情熱は、誰にも真似できないだろう。
村岡先生が試作した入れ歯は、約30個。
インタビュー中、様々な入れ歯を自分の口で取っ替え引っ替えして、説明してくれた。
この内容は、週刊ポスト「歯科治療の新常識(仮)」特集で、近日中にご紹介する予定だ。
そして、今日発売の女性セブンでは、「海外でやっていない日本の治療」の中で「銀歯」についてコメントした。
日本の中高年世代なら、高い確率で銀歯が入っていると思うが、海外ではほとんど「銀歯」をしている人を見かけた記憶がない。
2016年、リオデジャネイロで開催されたオリンピックの一場面が、今も鮮烈に焼きついている。
競泳の表彰式でセンターに立った日本人選手は、輝くような笑顔を見せてくれた。その瞬間、ライトを反射した銀歯がキラリと光ったのだ。
日本では、虫歯治療の主流はずっと「銀歯」だった。
使用している金属は、金、銀、パラジウムを主成分とした合金で、歯科業界では「金パラ」と呼ばれている。
近年、パラジウムがレアメタルとして取引価格が高騰しており、去年暮れには「金パラ」と「地金」はほぼ同じ値がつけられた。
「銀歯」の主なメリットは、「堅牢性」と「価格の安さ」だったが、現在では安い金属ではなくなってしまった。
「堅牢性」も、それが必ずしもメリットとは言い切れない。
銀歯自体が長持ちしても、その下で虫歯が再発しているケースが少なくないからだ。
歯科先進国とされているスウェーデンに渡り、歯科医の資格を取った日本人歯科医がいる。
その人によると、スウェーデンの虫歯治療は、コンポジット・レジン修復(略してレジン修復)が基本だそうだ。
レジン修復なら、歯に対するダメージが最小限で済むことが理由だ。(虫歯のサイズにもよる)
レジン修復とは、虫歯部分に乳白色のプラスチック系素材を接着させる方法。
日本もスウェーデンと同時期に、レジン修復が導入されたが、「制度的な原因」によって普及が遅れた。
そして今も一部の歯科医は、レジン修復を「誤解」しているため、レジンより銀歯を患者に勧めている。
私たちは、こうした歯科治療の現実を知った上で、治療法を自ら選択することが可能な時代になった。
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