無法地帯の自由診療、無責任な免疫クリニック

「オプジーボ」と免疫療法 併用リスクに製薬会社も注意喚起
[NEWSポストセブン2017.9.3]

オプジーボ、ヤーボイなどの免疫チェックポイント阻害剤と、NK細胞療法を組み合わせた、独自の治療を行う自由診療の免疫クリニックが複数ある。オプジーボに関しては、これまでにない高い効果が報告されている一方、間質性肺炎や免疫系などの重篤な副作用が確認されている。
「諸刃の剣」ともいうべき、扱いが難しい薬だ。
オプジーボと免疫療法の併用では、死亡例も出ており、去年7月には製造販売元の小野薬品工業から注意喚起がされた。
オプジーボの添付文書の警告欄には、こう記されている。

「本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、 がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、 本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること」

つまり、オプジーボの投与は、重篤な副作用が起きた際、集中治療などができる病院などに限定しているのだ。
自由診療の免疫クリニックには、こうした体制などあるはずもない。医師のキャリアを見ても、わずか数年前までは、がん治療とは全く異なる分野に携わっていた人間が多い。
さらには、免疫クリニックは、オプジーボの添付文書で定められた「用法用量」とは異なる、独自の「少量投与」を進めている。

こうしたクリニックが、なぜ国や製薬会社の指導を無視して、治療を行なうことができるのか?
実は、該当するクリニックの医師に直接確認したところ、オプジーボは国内の正規流通ルートではなく、海外から個人輸入して、規制を受けずにいるのだ。自由診療が無法地帯と化している、と言っても過言ではない。
派手なCMで展開している医療グループは、「現時点での最新・最強のがん治療は、当院の「アクセル+ブレーキ療法」、「NK+オプジーボ+ヤーボイ投与」だとして、宣伝を続けている。そして、次のような症例を連日ブログで配信している。

「40代女性、卵巣がん術後再発+腹膜播種~マーカーが低下」
「 60代女性、腎盂がん+多発リンパ節転移~総合的にがん縮小」
「 80代後半男性、下咽頭がん~高齢なので治療できないと言われたが、がん消失」
「70代男性、胃がん術後再発+膵浸潤~高齢で治療できないと言われましたが、元気に1年経過」

年代、性別、症例を、まんべんなく網羅しており、多くの患者や家族の心を捉えるように練られている。だが、こうした宣伝行為は、医薬品医療機器等法・第66条、67条が定めた医薬品の広告規制に抵触している可能性が高い。
この医療グループの医師は、説明会で次のように発言している。

「オプジーボ、ヤーボイ、NKのウチの治療は、自由診療になります。
これを主治医さんが、すごく嫌うケースがあります。99%嫌がります。
正直に、主治医に言ったがために、じゃあそこで全部見てもらってください、うち来なくていいですよって言って、放り出されて。要はがん難民ですね。
保険で具合悪くなっても入院できないし、保険でCTとか検査もできなくなったというので、僕の方に泣きついて来られた患者さん、初期のころ、多々見たので、現在はトラブルになりそうだったら主治医さんに言わなくていいですよとお話ししてます。でも、受ける権利はあると思うので」

(参加者) 言わないでいいのですか…

「そうです、言わなきゃわからないですから」

重篤な副作用が出ても、このクリニックでは対応しないし、その体制も能力もない。主治医に黙っていたほうがいいという理由は、問題が起きた時に患者をそちらに押し付ける為である。
医師にあるまじき、あまりに無責任な発言だ。免疫クリニックのこうした行為は、これまで培われてきた医療に対する信頼性を大きく損なうものであり、決して許されるものではない。