歯周病とコマーシャリズム

「自分の歯を失わないために、どうすればよいのか?」

中高年世代になると、誰もが入れ歯にはなりたくないと思い、高価なハミガキを購入したり、良い歯科医はどこにいるのかと気にかける。
しかし、各ハミガキ・メーカーが利益誘導を仕込んだ情報発信をしているのが現実であり、誤ったイメージに踊らされて歯周病を完治するタイミングを失っている人が多いのではないか。

様々な歯科のセルフケアグッズ
「歯周病を防ぐ」「白くて綺麗な歯に」「息スッキリ」…店頭には様々なセルフケアグッズが並ぶ。(C)M.IWASAWA

成人が歯を失う最大の要因である「歯周病」に関しては、ハミガキ・メーカー各社が「歯周病を予防する」を謳い文句に、次々と新製品を送り込み、年間5億個を超える製品が流通している。
ただし、冷静に考えてみると、薬用ハミガキだけで、歯周病を予防するのは不可能だ。

歯磨きをしている時間帯だけは、歯周病菌を殺菌する効果が働いている可能性もあるだろう。
だが、「バイオフィルム」という固着性の強い状態の中で繁殖している歯周病菌は、歯磨きを終えた後に再び勢いを取り戻している、というのが歯周病治療の常識である。
さらに、歯磨きだけで、歯周病を治せるという誤解も生まれている。

歯周病の治療は、クリニックで歯科衛生士による、スケーリングやルートプレーニングという、歯周ポケットのクリーニングが必至。
値段の高いハミガキや極細歯ブラシを使ったからといって、歯周ポケットのなかに固着したバイオフィルムは除去できない。
つまり、コマーシャリズムが、歯周病を治すタイミングを失わせている可能性があるのだ。
そして、これまで正しい歯磨き方法を指導してこなかった歯科クリニックや、 疾病保険という古い概念に囚われて「予防歯科は保険適用外」としてきた厚労省の責任も大きい。

とは言っても、自分の身を守るのは自分しかいない。
今回、週刊ポストの記事では、あえて「模範的な歯磨き方法」などは紹介しなかった。
なぜならば、中高年になると、各々で銀歯、ブリッジ、インプラントなどの治療を受けており、歯磨き方法や使う道具は、個人によって異なるからだ。
自分の歯を残すためには、まず自分の歯の状況に合わせた歯磨き方法を知る事、それを指導してくれて、定期的な管理をしてくれるパートナーとなる歯科医や歯科衛生士を見つけてほしい。