週刊ポストの「やってはいけない歯科治療」の取材で、いつまでも付きまとった疑問。
「歯を削る治療」が主流だったこと、「安易な抜髄」が横行していたこと、歯を残す最後の砦となる「根管治療」がズサンだったこと。
これらの要因が、複合的に重なって、日本人の歯の寿命を縮めていたと考えられる。
そこで、週刊ポストの連載を単行本としてまとめる前に、スタディグループの集まりや、根管治療などを取材させていただいている。
この日は、歯内療法学会の理事で、欧米のエンド(根管治療)専門医と交流が深い、小林優先生の根管治療をつぶさに拝見した。ドイツのカールツァイス製マイクロスコープを使うと、根管の先端まで見通すことも可能である。
指先の感覚に頼っている従来の「手探りの根管治療」と、超音波とマイクロスコープで「可視化された治療」では、成功率に大きな差がでるのは当然だと改めて感じた。
とはいえ、根管治療の診療報酬があまりに低く設定されている為、高額なマイクロスコープを導入したり、じっくり時間をかけて丁寧な治療をするのは経営的に難しい、という声も歯科医から聞く。
ちなみに、小林優先生は基本的に自費診療のみ、ということだ。
80歳で20本の歯を残そうという「8020運動」が、国と日本歯科医師会によって行われているが、根管治療を充実させる施策こそ必要なのではないだろうか?