過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎
(東洋経済 5/21)
今週の東洋経済は、「医療費のムダ」を特集している。
胃がん検診のバリウム検査について、多岐にわたる取材を基にした分析と考察がされているので、ぜひご一読いただきたい。私もご協力させていただいた。
臓器別に「がんのリスク因子」が、徐々に解明されている。胃がんの場合は「ピロリ菌」。
つまり、ピロリ菌に感染していない人にとって、「バリウム検査は全くのムダ」に等しいとも言える。
先見性を持った、横須賀市や東京・大田区などの自治体は、ピロリ菌の有無を調べる「胃がんリスク検査=ABC検診」を導入して、胃がんの発見率を大きく向上させた。
また、働き盛りの世代の命を奪う「スキルス性胃がん」についても、ピロリ菌感染が大きく影響していることが、上村直実(国立国際医療センター・国府台病院名誉院長)らの研究で解明されている。
「1年に一回、全員一律に5大ガンの検診を受けて死亡率を減少させる」という発想自体が、過去の遺物でしかない。
このまま、漫然とバリウム検査を続けることは、救える命を見捨てているに等しい行為だと私は考える。
この特集記事に関するコメント欄に、ある勤務医の方が「過剰な検査をオーダーするのは経営への配慮ではなく医療訴訟への配慮」と述べていた。
そのような本音は、取材した医師たちから聞くこともあるが、客観的に見れば「医療機関の自己防衛」でしかなく、患者不在であることに変わりはない。
厚労省と関連学会が、明確にガイドラインを策定すれば、ムダな検査をしなくとも、訴訟は回避できるだろう。
この特集を「医者叩き」だと反発している声もあったが、医療現場の現実を共有することこそが、問題を解決する第一歩ではないだろうか。