☞「南果歩 抗がん剤ストップ中と明かす」日刊スポーツ2017.10.3
この数日、女優・南果歩さんが、日本対がん協会のイベントで、標準治療を中止して代替療法に切り替えたと発言したことを巡って、議論となっている。
日刊スポーツは、10月1日付の配信記事のリード(見出し)に『見本にして』と入れていたが、批判が高まったことを受けてなのか、今日になって、このワードをカットしたとみられる。
<前> 南果歩『見本にして』抗がん剤ストップ中と明かす
<後> 南果歩 抗がん剤ストップ中と明かす
ただし、記事本文を読む限りでは、南果歩さんが、まず手術を受けて、再発予防の術後化学療法として抗がん剤を受けたものの、副作用から代替療法に切り替えたことがうかがえる。
つまり、がんの初期治療は標準治療を受けているのだ。
代替療法は、がんを治す目的ではなく、標準治療でダメージを受けた身体の回復のためと理解するのが自然だ。(※一部追記)
また、ご自身の決断が必ずしも正しいわけではなく、個人的な決断と強調しているし、その結果は自己責任、と発言していることを記事では紹介している。
このように、南果歩さんが代替療法を勧めていると言う誤解が生じない配慮がされていた。
そもそも『見本』の意味は、全体から抜き出した「一部」の商品などを指すものであり、模範例を意味する『手本』とは似て非なる用語だ。
スポーツ紙や週刊誌は、センセーショナルな「見出し」こそが、読者の関心を引くものと考えているので、過激になりがちだが、今回の記事タイトル自体は何も問題はないと思う。
しかも、南果歩さんの場合、再発予防の治療としての抗がん剤(ハーセプチン、ホルモン療法の可能性もあり)を中止したものだ。
今回の記事に過敏な反応をしているのは、標準治療こそが絶対的な正解と思っている人や、日本対がん協会を公的な組織と勘違いしている人ではないか。
医療者の中には、ガイドライン至上主義の人も少なくない。
しかし、ガイドラインは臨床試験と統計学が導いた、最も確率が高く有効性が証明された治療法であるが、そこから漏れてしまう人だっている。
患者によって副作用の度合いも大きく異なるし、費用も安い代替療法を選択するのは、個人の自由だ。
ただし、免疫細胞療法は極めて高額な費用がかかり、有効性が立証されていないのに効果があるかのようなトリックを使っている点で、絶対的に許されない詐欺的な医療でしかない。
この日刊スポーツの記事よりも、国立病院機構鹿児島医療センターの花田医師が、免疫細胞療法について「患者によって効果がある」と言う発言を垂れ流したNHKの報道番組の方が、誤解を招く内容だろう。
実験的な医療の免疫細胞療法を、一般診療として行うのは倫理的に重大な問題がある。