5月30日から書店に並んでいる拙著「やってはいけない歯科治療」と連動させた記事を書きました。
今回のテーマは、日本人の抜歯原因・第3位の「歯根破折」。
レントゲン画像をご覧いただくと、歯根が「縦」方向に割れているのが分かると思います。
大半の歯科医は即座に「抜歯」を勧めるケースです。
50年以上も「歯根破折」の治療を研究している、歯科医・眞坂信夫氏によると、主な原因は「メタルコア&ポスト」。
虫歯治療で歯髄を抜いた後、空洞になった根管に差し込まれて、銀歯など被せ物の土台とするものです。(レントゲン画像に写る、先端が尖った白い影)
この硬い「メタルコア&ポスト」が、歯根の中で楔(くさび)のように長期間かけて、柔らかい象牙質の歯根に作用して、「破折」させてしまう、と眞坂氏は言います。
現在では、象牙質と同程度の弾性比率のファイバーポスト、レジンコアが開発されて、「歯根破折」のリスクを大きく下げてることが可能になりました。
しかし、現在でもメタルコアの使用率は、ファイバーポスト、レジンコアより約21倍も高いのです。さらに、現在でも「歯根破折=抜歯」と考えている歯科医が大半を占めています。
こうした中で、眞坂氏の研究グループは「接着療法」という手法を開発、歯根破折したケースでも、抜歯をせずに残す方法を実用化しました。
「接着療法」は、5年間の生存率(歯根破折した歯が残っている状態)で9割以上。
ただし、これを実現できるのは、高いスキルと、微細な組織を映し出すCT、そして倍率の高い画像で治療できるマイクロスコープや拡大鏡などが必要となります。
そして、保険適用外なので、自費診療となり、治療費は高額です。
眞坂氏が心配しているのは、団塊世代の「歯根破折」が急増していること。ただし、「歯根破折」による抜歯は「対策」をとることで、回避することも可能だそうです。
詳しくは、今週の週刊ポストをご覧ください。
一般の人は、「メタルコア」「ファイバーポスト」など、知らなかったと思います。しかし、自分の歯を守るためには、これからは、私たちも専門的な知識も知る必要があるでしょう。
(歯の状態によって、メタルコアの方が適切な場合もある)
患者が歯科医療に不信感を抱く理由の一つには、詳しい説明をせずに、一方的に治療を行うケースが多かったことがあります。
これからは、治療の材料について何を使うのか、その選択理由を説明してもらい、納得した上で治療を進めていく。
信頼関係を築くためには、こうした取り組みをしていただきたい。
そして、歯科医に説明を求める以上は、患者にも一定の知識が必要だと思います。