NHK「ありのままの最期」患者の自己決定権

「こちらで対応する患者さんではないはずです。もう一度、しっかりご家族に話してください!」   救命救急センターの医師が、電話を叩きつけるように切った。 抑えきれないほどに、医師の気持ちが高ぶっていたのには、理由があった。   搬送依頼があったのは、これまで何度も運ばれてきた、在宅の末期がん患者。 その患者本人は、延命治療の拒否を書面で示していた。 医療現場で […]

緩和ケアで生き抜いた3人の男たちと家族の物語VOL.3

VOL.3 最後まで仕事を続けるという選択 <出会い>  2014年9月、緩和ケア診療所いっぽの密着取材を開始した初日に出会ったのが、平野治行さんだった。 73歳にして現役の設計士。ほがらかな笑い声、強い光を放つ眼、才知溢れる会話。大腸がんステージ4を抱えている患者とは、思えないほど活力がみなぎっていた。 その奥深い人間性に惹かれ、16回にわたって、仕事現場から、自宅で最後の時 […]

【動画】スキルス胃がんと闘った美奈子さんの伝言

スキルス胃がんの闘病中だった上山美奈子さんが、昨日の明け方に永眠された。今年4月、希望の会(スキルス胃がん患者家族会)のメッセージ動画は、体調を崩していたこともあって、入院先のベッドに座って撮影した。残された時間の中で、美奈子さんが伝えたかったこと、それをぜひお聞きいただきたい。 これまでスキルス胃がんは、早期発見が難しいと決めつけられてきた。「バリウム検査の方が、スキルス胃が […]

家族が踏みにじった患者の尊厳

医師で僧侶の田中雅博さんが、すい臓がん末期となり、NHKのスタッフに密着取材を許可するところから番組は始まる。田中さんは明確にDNAR(延命治療の中止、または拒否)の意向を示し、セデーション(鎮静処置)を希望していた。 だが、医師の妻は徹底して延命をはかる。「私を眠らせてほしい」とはっきり言う田中さんに対して「薬を使わないのは、あなたが最期だと思っていないからだよ」と受け入れな […]

緩和ケアで生き抜いた3人の男たちと家族の物語 VOL.2

VOL.2・二千キロの旅に出た家族 「苦しい道と楽な道を選ぶなら、苦しい道を選択して、その様にすれば努力の実は成る」 抗がん剤の副作用で痺れる手にボールペンを握り、何度も書き直したこの一文は、会社を引き継ぐ次男に向けて贈られたメッセージだった。  松野徹也さんは昭和21年生まれ。30歳の時に機械設計会社を裸一貫で、群馬県高崎市に立ち上げ、業界で信頼される存在に育て上げた。  6 […]

緩和ケアで生き抜いた3人の男たちと家族の物語 VOL.1

VOL.1 神様がくれた家族の時間 「友達を連れてこられる家に住みたい、と娘に言われてね。よし、大きい家を建てようと、毎日4時間しか眠らないで働いたのさ。二人の娘はしっかり育ったし、母ちゃん優しいし、満足しているよ」 森下勝博さん(1949年生・伊勢崎市)は、亡くなる1週間前に、自分の人生を振り返ってこう話してくれた。自宅を新築したのを契機に、勝博さんは深夜帯の運送業務に就き、 […]

【いっぽ】緩和ケアで生き抜いた3人の男たちと家族の物語

今日9月16日発売の週刊ポストに、緩和ケアをテーマにした特集記事を書きました。これは三年越しで取材している、緩和ケア診療所いっぽの密着ドキュメンタリーの予告版として発表したものです。 完治の可能性が低いステージ4のがん患者にとって、抗がん剤治療は、命を大きく左右する大きな問題です。治療を受けるか否か、どこまで継続するか中止するか、自己決定権が尊重される以上、その結果は自身が引き […]

免疫細胞療法は現代医療の「都市伝説」

元国立がん研究センター・がん予防・検診研究センター長の医師が、スタッフとして名を連ねている、東京ミッドタウン先端医療研究所。ここは、自由診療の免疫細胞療法クリニックである。権威とされる医療機関の名前を利用するのは、免疫細胞療法の「信頼性」を高める常套手段だ。同クリニックのホームページには、連携施設として以下の大学病院、有名病院が紹介されており、「病院のブランド」が、免疫細胞療法 […]

無法地帯の自由診療、無責任な免疫クリニック

「オプジーボ」と免疫療法 併用リスクに製薬会社も注意喚起[NEWSポストセブン2017.9.3] オプジーボ、ヤーボイなどの免疫チェックポイント阻害剤と、NK細胞療法を組み合わせた、独自の治療を行う自由診療の免疫クリニックが複数ある。オプジーボに関しては、これまでにない高い効果が報告されている一方、間質性肺炎や免疫系などの重篤な副作用が確認されている。「諸刃の剣」ともいうべき、 […]

免疫療法クリニックの奇妙なグラフ

東京で展開している免疫クリニックのホームページに掲載されている「樹状細胞ワクチン療法の累積症例実績」を示す2つのグラフ。このクリニックが技術提供を受けている会社の契約医療機関の症例合計だという。 2017年3月末にデータを更新している「累積症例実績」(画像1)は、右肩上がりに伸びていることを示している。そして、部位別のグラフ(画像2)は、すい臓がんの症例が突出して多い、と読み取 […]

<免疫療法>国立がん研究センター・前理事長の矜持

<暴走する免疫クリニックを厳しく批判した、国立がん研究センター・前理事長の矜持> 週刊ポスト9月8日号『受けてはいけない免疫療法』において、私は免疫療法クリニックについて調査報道を行なった。 末期がん患者が騙される免疫細胞療法[週刊ポスト2017.9.8号]・ がん患者がすがる「免疫療法」医師同士は競合を詐欺師扱い・ 免疫療法に誘導する巧妙手口 画像偽装、患者TV 出演など・ […]

白衣の詐欺師たちは、同じ手口を使う

有効性が定かではないのに高額な費用をとる、自由診療の〝免疫細胞療法〟(以下、免疫療法)。これでボロ儲けしてきた「白衣の詐欺師」たちは、いま不安に苛まれている。無届けの臍帯血療法で医師らが逮捕され、次は詐欺的な免疫療法がお縄になる可能性が出ているからだ。 巷の民間クリニックで行われている免疫療法は、患者から血液を採取して、リンパ球中の免疫細胞を培養したり、がん細胞の目印をつけて患 […]

がん患者が告発する「免疫療法の闇」

その女性は、医療関係者だから、自分がステージ4のがんだと知った時に専門知識をフル稼働させ、地域で最も信頼できる大学病院で、最善の治療を選択した。画像や腫瘍マーカー値では、がんが確認されない「寛解」に持ち込んだが、再発の不安はつきまとってきた。 治療を受けた大学病院の敷地内に「がん免疫細胞療法」という先進医療を行う民間施設があると知ったのは、偶然に見たテレビの番組だった。自分の免 […]

「胃がん、大腸がん検診で4割見逃し」のNHK報道に対する”検診ムラ”の圧力と焦り

がんセンター:見落とし評価困難 NHK検診報道で声明(毎日新聞2017年7月13日) 先月26日、NHKは「青森県の胃がん・大腸がん 検診で、4割が見落とされた可能性がある」という弘前大学の調査結果(青森県からの委託事業)を報道した。がん検診の頂点に君臨してきた、国立がん研究センターの検診研究部としては、面子を潰された格好になったわけだが、昨日(7月13日付)で、「見解」を公表 […]

バリウム検査・7つの大罪

厚労省が、ようやく胃がん検診にヘリコバクター・ピロリ菌の感染を考慮する方針を決めた。実は、ここに至るまで「検診ムラ」による強い抵抗と妨害があったことは、週刊ポストや拙著でお伝えしてきた。それでも、自治体や職場の胃がん検診は、まだバリウム検査を続けている。根拠となっているのは、国立がん研究センター・検診研究部によるガイドラインだ。そこには「7つの大きな罪」が隠されていることを指摘 […]

中学生のピロリ除菌治療は妥当か?

佐賀県では、中学生を対象にピロリ菌の検査と除菌治療が始まっている。この政策決定には、知事が胃がんだったことが大きく影響しているようだ。若い時から自分の胃がんリスクを把握することは、自己管理のモチベーションになると思う。 ただし、HPVワクチンで多くの副作用例が出たことを考えると、10代前半で除菌治療を行うのは早すぎるのではないか。 佐賀県は、事業開始から1年たったのを機に、中間 […]

医療界、そして法曹界のモラルハザード

免疫チェックポイント阻害剤・オブジーボをめぐる問題について、ロハス・メディカルの川口 恭氏が核心を分かり易く解説しているので、ぜひご一読いただきたい。 『難民と医療不信が大発生 オプジーボの光と影②』[市民のためのがん治療の会 シリーズ・がん治療の今] 自由診療の免疫治療クリニックは、進行がんの患者をターゲットにした悪徳ビジネスに等しい、という声を患者家族から聞いた。追い込まれ […]

【胃がん検診】バリウム検査は終わりを迎える

私たちが胃がん検診を受ける理由は、ただ一つ。「胃がんで死にたくない」しかし、検診学者たちは口を揃えて、このセリフを言う。 「国として死亡率を減らすことが重要」 日本では、前時代的なバリウム検査が今も主流で、助かる命が見殺しにされてきた。 バリウム検査より、内視鏡検査の方が胃がん発見率が3倍高い。さらにバリウム検査は「見逃し」も多く、バリウム製剤が大腸で固まって孔を開ける重篤な事 […]

【動画】人間を見ていない胃がん検診、そしてピロリ菌の誤解

轟哲也さん:「スキルス胃がんは、20代から40代の患者も多い。幼子を抱えた母親が命を失っています。胃がん検診ガイドラインでは、スキルス胃がんの早期発見について、どのような考慮がされているのでしょう?」 濱島ちさと氏:「スキルスを対象に評価はしておりません。  検診の効果、利益と不利益のバランスが取れるところで、対象年齢を50歳以上に引き上げました。 がん検診自体、疾病負担の多い […]

ピロリ菌の感染率から見えてくる「検診の裏側」

5日の厚労省がん検診あり方検討会で、上村直実先生が配布した資料の中に、年代別のピロリ菌感染率のグラフがあった。これを見ると、胃がん検診の対象年齢である50歳で、ピロリ菌に感染しているのは約4割。 つまり、6割は胃がんのリスクが殆どないにも関わらず、バリウムを飲まされているのだ。 検診コストも無駄でしかない。   しかし、検診学者は、ピロリ菌の感染有無を胃がん検診に反映 […]