こうした状況にありながら、バリウム検査が続けられている理由とは何か?
それは、胃がん検診が巨額の利権となっているからだ。
バリウム検査に毎年投入される税金は、600億円。
これを取りまく、医学者、検診組織、役人、そして新聞社も含めた巨大な“検診ムラ”ともいうべき利権構造が長年にわたって構築されてきた。
厚労省は、2016年度から胃がん検診に内視鏡検査を導入する方針を決定したが、
現時点では対応できる医療機関や内視鏡医が足りない為、現実的ではないと現場から早くも混乱を危惧する声が上がっている。
受診者をピロリ菌感染者に絞り込む等の解決策があるが、バリウム検査の延命をはかる検診ムラの抵抗によって実現していない。
一方で、年間5万人が胃がんで命を落とす現状を変えようと、“検診ムラ”を相手に行動する医師も現れている。
本書は、新聞やテレビが報じてこなかったバリウム検査の危険性と、利権にまみれた“検診ムラ”の実態、
そして胃がんから命を守るために必要な対策とは何か、これらを調査報道によって描いたノンフィクションである。