文藝春秋3月号「尾崎治夫会長 疑惑のカネ」に書かなかったこと

 今月10日発売の「文藝春秋」に掲載された記事では、東京都医師会長の尾崎治夫氏を厳しく批判した。  テレビニュースの時代から最近まで、私が手がけてきた報道の中で個人を批判することは少ない。(例外として、自著の中で近藤誠氏を正面から批判している)  我が身を振り返ると、これまで多くの誤報を出し、報道で他人を傷つけてきた。車の運転では、いつも制限速度を少しオーバーして走る。  そん […]

新型コロナウイルスに感染しました

5日間ほど、強い頭痛と倦怠感が続いていましたが、原稿の追い込み時期で、睡眠不足のせいだろうと思っていました。 念のために体温を測ると、「37.5度」。私の平熱は36度前後なので、新型コロナの可能性を疑わずにはいられません。仕事場近くにあるクリニックの発熱外来で、PCR検査を受けた翌日、携帯電話に連絡がありました。 「結果は陽性でした。追って保健所から連絡があります」 体温も38 […]

2021年のご挨拶にかえて

「どうせなら、強い敵を倒しましょう。 そうじゃなければ、この問題はいつまでも変わらない」  担当編集者の言葉を聞いて、熱いものがこみ上げてきた。 報道に携わる人間たちがトラブルを避けて、安全飛行を決め込むようになって久しい。こんな時代でも、本来の記者魂をもった人が存在している。それなら、こちらも覚悟を決めて闘うだけだ。   強い敵とは、莫大な治療費をとりながら、効きもしない「が […]

免疫クリニックの「広告の罠」に要注意!

がん医療の問題をYouTubeで精力的に発信している、押川勝太郎医師。10月14日に配信されたのは「患者を食い物にするがんビジネス・旅先#172」は、がん治療をめぐる詐欺的なビジネスが横行している実態を警告する内容だ。 それなのに、このYouTube動画のコメント欄に「自由診療のがん免疫クリニック」の広告が掲載されている。画面の下、大きく「注意!」と矢印で示した。押川医師の動画 […]

「近藤誠」のトリック

メディア関係者で、今も近藤誠氏を信用している人が少なくない。知名度が高い彼を起用することで、一定の販売部数を確保できる、という神話もある。だが、いい加減に古臭い考えは捨てた方がいい。近藤誠氏の曲解に満ちた主張を広めることは、彼の共犯者になるのと同義だ。 発売中のプレジデント巻頭企画は、「緊急告発!信じてはいけない健康診断」。近藤誠氏と和田秀樹氏の対談形式で構成されている。近藤氏 […]

取材を受ける立場になって考えたこと

「近藤誠さんを使った健診の特集記事、読みましたよ。岩澤さんのパートも4ページで組んでいましたね」がん治療のテーマで一緒に取材をしている編集者から言われ、私は面食らった。たぶん、豆鉄砲でも食らった間抜けな顔をしていたと思う。噛み合わない会話を交わし、事務所に戻って届いていた献本を目にした。「何だ、これは!」呆気にとられた。今月のプレジデント誌の表紙を飾っていたのは、あの「近藤誠」 […]

伊藤精介から託された仕事

17年前の9月19日、一人のノンフィクション作家が旅立った。  伊藤精介、享年52。  雑誌・ブルータスの元編集者で、「浅草最終出口」、「銀座バーテンダー物語」、「今宵どこかのBARで」などの著書がある。遺作となった「沈黙の殺人者 C型肝炎(小学館)」がきっかけで、私は伊藤と知り合った。  2000年当時、C型肝炎の患者は約200万人、B型肝炎は約150万人と推定されてた。「肝 […]

「抜歯ドミノ」を防ぐために知るべきこと

 「どのように治療が進んでいくのか、詳しい説明がありませんでした。いつ治療が終わるのかも分からない。だから費用の総額も見通しが立たないまま、治療を受けていたのです」  以前、このような体験をした編集者が、提案してくれた企画がある。週刊ポスト6/28号に掲載された、抜歯後の各治療をフローチャートにまとめた特集だ。  基本的な3つの選択肢「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」に、「 […]

【川崎登戸殺傷事件】事件現場で感じた報道の役割

夜明け前、強い雨が降った。亡くなった父親が倒れていた場所には水溜りができて、灰色の空を映していた。路上に積まれた数え切れないほどの花と供え物。多くの人が失われた命を悼んでいる。 背後から無言で襲った後、容疑者の男は自分の首に包丁を刺して息絶えた。「この事件は、見ず知らずの他人を巻き添えにした無理心中」、と精神科医が嬉々としてテレビで解説する。 こうした報道に影響されたのか、ネッ […]

除草剤「ラウンドアップ」に潜む発がんリスク

ガーデニングや家庭菜園が楽しい季節になった。そこで、意外に面倒なのが雑草取り。ホームセンターなどで売られている「除草剤」で、手早く処理してしまう人も多い。だが、その「除草剤」の発がんリスクが、いま世界各地で問題となっていることは、日本ではほとんど知られていない。 土曜日の昼下がり、東京・丸の内に人々の声が響く。世界的な製薬企業のバイエル社が入っているビルの前で、200人を超す市 […]

「週刊誌の見出しに反論する」に隠された思惑とは?

売られた喧嘩は必ず買うことにしている。喧嘩とは、もちろん殴り合いではない。主にネット上で行われている、論理的ではない批判、誹謗中傷、言いがかりの類を指す。私の報道は、既存の医療制度や利権などについて、問題提起するテーマが多い。だから、様々な反発が起きるのは必然であり、批判や議論が交わされるのは健全なことだと考えている。特に、この数年取り組んでいる歯科治療の分野は、完全な正解がな […]

麻酔による子供の死亡事件で、歯科医は裁かれるべきか

医療現場では、予測不可能な事態が起きる。だから判断ミスをした場合に、刑事事件で裁くことは妥当ではないという意見は根強い。ヒューマンエラーを100%なくすことはできないし、刑事事件として罪に問われることによって事実が隠蔽され、かえって再発防止策を講じることが難しくなると考えられているからだ。日常業務の判断ミスが、即刑事罰に問われるとなると、心理的なプレッシャーが大きく、現場が萎縮 […]

偏差値40を切った歯科大に、未来はあるか

受験シーズンも終盤に入ったが、今年度も歯科大の偏差値は低空飛行だ。今週発売のPRESIDENT「歯医者の裏側」に掲載されている、歯科大・歯学部の偏差値ランキングによると、最も低い「37.5」となったのが私立で4校もある。医療者の学力レベルとしては、問題のある数字だ。 第112回 歯科医師国家試験の合格発表について <厚生労働省 3/18発表> 10年ほど前から、偏差値が低い歯科 […]

「歯医者のウラ側 徹底解明!」PRESIDENT誌の特集に協力しました

歯科治療を大きく取り上げた、PRESIDENT・2月25日発売号。経済誌らしく、データ分析を基に歯科治療の現状と課題を伝えている。私が協力させていただいたのは、「歯医者に聞いた 受けたい治療、受けたくない治療」のコーナーと「コラム3・ルポ潜入」。 編集部スタッフにインタビューを受けた時、こんなことがあった。「CMの露出度が高い歯科医、クリニックについては、基本的に敬遠すべき」、 […]

【動画】福島原発かながわ訴訟、避難住民に勝訴判決…それでも苦悩は続く

原子力発電所が爆発して、放射性物質が拡散されて、間もなく8年が経つ。故郷を奪われて、全国各地に避難した福島の住民たちは、今どうしているのか。政治家も、マスコミも、そして大半の国民も、思い返すことはほとんどない。 東京電力福島第一原発の事故で、福島県から神奈川県に避難した60世帯175人の住民が、国と東京電力に損害賠償を求めた、「福島原発かながわ訴訟」。2月20日、横浜地方裁判所 […]

歯科治療を報道する理由 :「草の根歯科研究会」の勉強会で伝えたかったこと

日本の歯科業界が隠してきた「タブー」の一つに「学校の歯科検診」がある。検診で見つかった初期虫歯を見つけると、歯科医は治療勧告書を子供たちに渡す。これによって「歯を削って銀歯にする」治療が、半ば強制的に行われていた。従わない保護者は、ネグレクト(育児放棄)とみなされてしまう。 しかし、初期虫歯は正しい口腔ケア(歯磨き等)と再石灰化によって、修復されることが分かっていた。一度、歯を […]

製薬会社と医師、そしてマスメディアの知られざる関係

この世界は、金が絡むと話が複雑になる。本音と建前が交錯するからだろう。いわゆる大人の事情。講演や原稿執筆、コンサルティングなどの対価として、報酬が出るのは社会的に常識の範囲である。だが、製薬会社から医師に渡る金には、報酬名目以外に別の思惑が込められている場合があるから、情報公開のルールがある。 製薬会社は、無駄に情報公開の手続きを煩雑・複雑化させているし、入手した情報の二次使用 […]

マネーデータベースが教えてくれた、緩和ケア医の矜持

診察室から、豪快な笑い声が聞こえてきた。ここを訪れるのは、深刻な状況のがん患者のはず。それなのに、なぜ愉快に笑えるのか……許可をもらって診察室の中に入ってみると、眼光が鋭い白髪の男性がいた。二週間に一度の外来で、ゆっくりと進行していく自分の病状を笑いとばす。それが平野治行さんという人だった。 2014年、私のチームは、緩和ケア診療所「いっぽ」と萬田緑平医師(現・萬田診療所)を中 […]

インフルエンザ大流行

ゾフルーザの耐性問題と謝礼金 インフルエンザの勢いが止まらない。今日、厚労省が公表した最新の調査によると、1週間で患者数が約10万人増加、1医療機関の受信者数は約57万人。インフルエンザの統計を開始して以降、過去最悪の流行だ。 テレビや新聞が、画期的なインフルエンザの新薬として紹介していたのが「ゾフルーザ」。これを服用した小学生2人から耐性ウィルスが検出されたと、国立感染症研究 […]

【動画】歯科医がレジン治療を誤解する理由とは?

「虫歯治療のレジンは割れやすい?」 先週の週刊ポストでは、「昔の常識」を頑迷に信じ込んでいる歯科医が、少なからず存在していることを書いた。最も象徴的なのが「銀歯」。歯を削る量を最小限に抑える「コンポジット・レジン修復」が、ようやく保険診療の現場に普及してきたが、それでも月間約180万本分の銀歯治療が行われている。 やはりというべきか、ある歯科医から編集部に対して、抗議が寄せられ […]